―――それは過去。けれど ほど遠からぬ、この国のむかし―――
二つの大きな戦争の間。
街には電気の明かり灯り、鉄とセメントの建物が目立つようになっていった時代。
一方、まだ山々には前人未踏の原生林が多く残り、その深い影の中に伝説・伝承を潜ませていた時代。
濃密に立ちこめる山気と、分厚く積もった落ち葉とを踏み乱し、駆けゆく者がある。
そう、樹々の間に間を荒々しく駆けてゆくのは、
修羅だ。 復讐の炎に我が肉を炙る、
鬼だ。
最愛の女を無残にも殺められた青年の、復讐の炎にドス汚れた瞳が、仇の姿を深山の中に追い求める。
仇、仇、憎むべき敵。
青年が追いかけ、滅ぼさんとする仇敵とはなにものか。
人も通わぬ深山に巣くい、跳梁し、翻弄するそれは―――人か? 山の怪か?
それは山人。
町里に住まう人々とは異なる、不思議、異形のモノたち。
―――これは、復讐の物語―――
最愛の者を奪われた青年の、山野を駆け巡り追い求め、仇はおろか、関わった者までも巻きこんで、滅ぼしていく物語。
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主人公 伊波 冬矢 (いなみ とうや)
- 本編の主人公。
幼少時に家族を亡くすという不遇の身の上にあったものの、その後養い親に恵まれ許嫁を得て、それなりに幸せな生を送っていた。
――が、許嫁が何者かに殺害されてしまったことにより、人生が一変する。
失われてしまった、かけがえのない日々。それが青年を復讐の鬼に変える。
猜疑に凝り固まった心、執念にドス汚れた瞳、なかば狂いかかった脳髄。
彼の復讐の炎は消えることがない。
仇であろうと無かろうと、関わった者全てを巻きこみ、破滅の淵に転がり落ちていくその日まで。
「お前たちはいずれこの世から消えゆく運命なのだろう―― だがそれを待ってなどいられるか! 死ね! 滅びろ! 死に絶えろ!」
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ヤマイヌと呼ばれた娘 いち CV:野月まひる
- とある山間の集落で “ヤマイヌ” と蔑称され、軽んぜられている娘。
過去になんらかの傷を負い、片目が潰れてしまっている。
集落から離れた山小屋に一人住まい、滅多に里に降りてくることはなかった。
しかしやむにやまれぬ事情から、伊波の荷物に手を出してしまったところ、あえなく捕まり、無残にも手籠めにされることとなる。
幸か不幸か常人より鼻が利くという体質もあって、猟犬代わりとして、かつまた手近な性欲・○○欲のはけ口として、以降伊波に○○のように引きずり回される羽目に。
彼女の首に打たれた縄は、物語の最後まで解かれることはない。
「めっかちって、言わないでね……?」
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山姫 リンドウ CV:高槻つばさ
- 復讐行に山野を駆け巡る伊波の前に出現した異形の女。
その骨格、風体からして常人とは思われず、恐らくは彼女もまた山人と思われる。
ただ、永きにわたる歳月を経てきたせいか、不可思議な妖力・不死身性を有しており、山人たちからも山姫・姫神扱いされている。
容姿のみならず、感性、性格もまた人間離れしており、伊波に対しても翻弄するような言動を取ることもしばしば。
伊波の仇とどういう関わりがあるのか不明だが、山人たちと同様に彼の憎しみを○く○く受ける。
が、自分に向けられる青年の感情の爆発を楽しんでいる節もある。
「お前のしつこさときたら、乳へ吸いつく赤子のよう…… 吸いたいかえ? 吸わせてやろうかえ……?」
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瀬川 京香 (せがわ きょうか) CV:香澄りょう
- 伊波が復讐行の途次出会うことになる女性。
その亜麻色の髪、薄鳶色の瞳は、欧州人の父と日本人の母の間に産まれた混血児という身の上によっている。
この時代の女性としてはまだ珍しい洋装の上に、興ったばかりの民俗学を研究しているらしく、当時としては相当に尖った人生を歩んでいる。
知的で穏当な女性ではあるのだが、その出自から、色々と障害の多い人生を送ってきたのではと推測される。
「この研究は、実地調査が大切なんです。だから私も色々な処へ、調査旅行に」
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山東 鈴子 (さんとう すずこ) CV:青葉りんご
- 伊波が訪れることになる山村の、分限者の一人娘である少女。
父親や家人からは蝶よ花よと過保護にされているのだが、なぜか宏壮な家屋敷の片隅の土蔵に封じこめられて暮らしており、両の手首足首には細い鎖が繋がれている。
ただ蔵の中は贅沢に整えられており、不自由がないせいもあってか、本人も外の世界には興味が薄い。
純真無垢、外界の憂き事に汚されざる、秘中の珠のような少女ではあるのだが―――
「鈴はねえ、お外になんか出なくってもいいの」
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山人 (サンジン) CV:草柳順子
- 深山幽谷に潜む、不思議のモノたち。
この国に住む人間たちの起源になったとも、あるいは人間とは異なる妖(あやかし)のモノだとも様々に言われているが、その正体は定かではない。
近年男がほとんど生まれなくなっているらしく、その数は減少の一途にある。
血が濃く、平均化されてきたせいか、いずれも容貌が酷似するようになっており、これもまた滅びゆく民族の特徴といえよう。
「山はあたいらの領分。里はあんたらの領分」
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車夫
- 化野(あだしの)と名乗る、人力車の車夫。
一つの町に留まらず、人力車を牽いて伊波の行く先々に現れる。
それが偶然によるものか、なんらかの思惑を抱いての行動なのか、彼自身は薄ら笑いに誤魔化すばかり。
「へっへっへ、奇遇ですねえ、旦那。先にお会いしたのは帝都で、でしたっけか」
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椿 啓文 (つばき ひろふみ)
- 帝都にて内務省に勤める、若き紳士。そして伊波の数少ない友人。
温厚な常識人であり、こういう人物が伊波と友達付き合いを続けていられるというのも不思議な話である。
伊波に対して忠告や諌言ができる少ない人間でもある。
なお細君あり。
「嫌われても仕方ないだろう。君という男は、ただでさえ顔相が悪いんだから」
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千種 初美 (ちぐさ はつみ) CV:野月まひる
- 伊波の養い親・千種子爵家の一人娘にして、青年の許嫁であった娘。
幼少時より聡明かつ明朗な娘であり、家族を喪い引き取られた伊波に対しても別け隔てなく接していた。
美しく健やかに長じていくうちに伊波との間に愛情を育み、婚約を結ぶまでに至る。
しかしある夜 街中で惨殺されてしまい、彼女の死がこの復讐の物語の発端となる。
伊波が想い続ける、最愛にして唯一の女性。
何故かヤマイヌ・いちは、この初美と容貌が酷似している。
「お父様もね、ほんとはもう判っていらっしゃるのよ、あなたとの婚約のこと――」
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