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その10文字を、僕は忘れない ダッシュエックス文庫
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宮崎菫は一日に 10文字しかしゃべれない。 それ以上は声にならないのだ。
スケッチブックで会話をする彼女は教室で浮いた存在だった。
けれど不器用でも懸命に対話しようとする姿と、誰よりも純粋な心に、俺は惹かれていった。
図書館で勉強を教えてくれた時、横顔が気になって勉強どころじゃなかった。
プールで見た水着が可愛すぎて、息が止まるかと思った。
初めてケンカをして、初めて仲直りのキスをした――。
「ありがとう」も、「ごめんなさい」も、「嬉しい」も、「大好き」も。
大切なことは 10文字でみんな伝えられるって、そう思ってた。
でも、菫が背負う過去の痛みも、菫の隣にいることの意味も、俺はわかっていなかったんだ――。